主人公の変化についていけない「千年茶師の茶房録 小梳神社より願いを込めて (富士見L文庫)」道具小路

あらすじ

将来の夢もなく、就活も早々に終えた藤堂。とある理由で静岡市の商店街、小梳神社近くにある緑茶専門店「お茶の燎」を訪れた彼は、作務衣を着た威圧感のある若い店主と、高貴な雰囲気を纏った和装の男・市松と出逢う。
店に通い常連客たちと触れ合ううちに、次第にお茶の魅力にハマっていく藤堂だが、この店にはまだ自分の知らない秘密があるようで―?

平々凡々な男の人生が、一杯のお茶によって一変する!
「お茶の道のりは果てないですよ」ようこそ奥深きお茶の世界へ―。

主人公の変化についていけない

あらすじに『店に通い常連客たちと触れ合ううちに、次第にお茶の魅力にハマっていく藤堂だが』とあるけれど、いやいやそんな描写あった? と首を傾げてしまう。

冒頭でお茶について知ったかぶりをした主人公(このシーンで共感性羞恥がある人はそこそこきついかもしれない)は、ちょっとした失敗のあと、頭をさげて緑茶専門店へと教えを請いに行く。そうして教えてもらってからはあとはもう、どんどんすごい勢いでお茶についでドハマリしていく。
……という、そのドハマリの様子は地の文でかなりさらっと描かれる。いやいやいやお前次第にっていうけど速攻じゃん。次第にかもしれないけれどもその次第に好きになる描写ほぼなく、気付いたらかなり沼に落ちてて足繁く通ってるじゃねえか。いや……その部分が詳しく読みたいんですが……。

もうちょっと細かく書いてくれと思うシーンは終盤にもある。もうとにかく、どこもかしこも「詳しく書いてくれー!」というポイントばかりだ。主人公は物語の中で変化する。成長する。それはわかるが、どうしてそうなったか、何を考えたのかが何もわからないままにどんどん進んでしまっていた。

 

出てくる人間はそれなりに個性的だが、個人的にはおう……?となりがちだった。
これは、私が1話目を読んでいる最中はてっきり茶房の店主である燎は仲間ポジションになってくると思っていたためで、それが完全に予想から外れたのが原因だと思う。ライバルや敵とは言わないが、絶対に友情ポジではなかった。嘘だろー……。こんな立ち位置しておいて……。

個人的に好きなキャラクターは三兎。プライド高そうに見えて気の良いツンデレ
主人公を突然ライバルとして宣戦布告してくるものの、そのライバル視している主人公が財布をなくしたときには快くお金を貸してくれるキャラ。お前ツンデレだけどめっちゃ良いやつだな……?
思うんだけど、この主人公と対立する立場を燎がやってくれたらこんなに読後にもやもやしなかったんじゃないのかな。

主人公が10歳ぐらい幼く見える童顔というのも、キャラ付けとしても薄いし、物語のネタにもあまりなっていないしでうーん……。

ついでに言えば、現代モノかと思いきやファンタジーだった。何もかもが予想から外れ、それが良い外れ方ではなくうーん……となる外れ方だった感じ。

 

緑茶に関しては興味深かったし面白かった。私が珈琲紅茶が飲めないこともあり読んでいてあ~~~~これ飲みたい!とひたすらなった。しかしそれ以外がどうにも……。
日本茶について読みたい時以外はあんまりおすすめしないかも。