『広告』が目的とするもの「アドカレ! 戸山大学広告代理店の挑戦 (富士見L文庫) 」森 晶麿

あらすじ

名コピーライターだった亡き父と同じ道を目指す私は、父の母校戸山大学に入学した。意気揚々と広告概論を受講するも、中身は期待外れ、広告研究サークルは言わずもがな…。
そんなとき、目に飛び込んできた学生だけの広告代理店“アド・カレッジ”の求人看板。訪れた私に、バードと名乗る代表取締役はいきなり採用試験を言い渡した。

豆腐屋のキャッチコピーを提案すること、期限は三日」

豆腐屋では強面の店主が待ち構えていて…?
広告業界希望者必見の青春物語

『広告』が目的とするもの

コピーライター見習いの主人公が最初に手を付けたのは強面の店主のいる豆腐屋。そこで主人公はコピーの作り方の難しさを理解する。
スーパーの豆腐よりもこの豆腐屋の豆腐のほうが美味しい。しかし、それだけでは広告の文句には弱い。間違いなく美味しいけれど、美味しい豆腐だけならば他の店にもある。
なら、何をメインに押し出せばいい。

これを読んでいて思い出したんだけれども、他と比べて違いのあるポイントって探すのがすごく難しい。
例えば大体の人が書いたことがあるだろう履歴書。あれだって自分のアピールポイントを見つけて文章にするものだが、一体自分の強みってなんなんだろう。サークルリーダー? そんなものサークルの数だけある。めっちゃゲームしてたけど、していたとはいえRTAチャレンジするタイプでもないからアピールポイントになるわけがない。ツイッターで色々発言しているけれどもクソみたいなツイートが多いから自慢になるわけがないしそこまでバズったこともない。
コピーライティングって、そんなそうそう見つからないアピールポイントを見つけ、目的とする人に可視化し、心を掴むためのものだ。しかもたいてい文字数がツイッターの140文字より少ない。うわめっちゃむずい。

 

豆腐はうまいがそこまでアピールポイントにはならない。じゃあどうすればいい。
悩んだ末、主人公は豆腐ではなく「豆腐屋の頑固親父」をアピールポイントとした。手元にある材料の在庫が切れたら豆腐食い倒れ旅行に行く予定の豆腐大好き頑固親父。こんな親父の作る豆腐なんだからきっとうまいに決まっている。そんな、『豆腐』ではなく唯一である『親父』をメインにしたキャッチコピーを作り上げた。
読んでいて、なるほどうまいと素直に思った。多分私も豆腐自体を美味しいと宣伝するものよりだったらこっちのほうが気になるだろう。
主人公の作り上げたキャッチコピーはまだ荒削りで、最終的には他のメンバーが手を加え、更に良いものとした。それでもたたき台を作ったのは間違いなく主人公だし、出来上がったものは主人公の色が残っていた。

作中のもので私が刺さったのは夜行列車のCMだ。主人公たちが作ったものではなくライバル会社が作成したもののほう。ただ文章で綴られているだけなのに、私も夜行列車に乗って遠くへ行きたいと思ってしまった。待っていてくれる人も会う人もいないんだけどね。それでも行きたいと思わせる、強い力があった。いやほんと夜行列車乗りてえわ。でも寝台列車とかもいいよね。夜行列車、全然乗ったことないけどどんなもんなんだろう。たいてい夜行バスに乗ってしまう。3500円で目が覚めたら東京、とてもお手軽で良いね。

 

書いてて思い出したけど、キャッチコピーと言えば本の帯もそうだ。
最近は電子書籍ばかりだけれど、今までに買った本の中で一番心に残ってるのだと王子降臨の「ひぃっ!美しすぎるっ!!」なんだけど、あのよくわかんないけど心を掴む感じなんなんだろうね。あの帯だけで完全にハートキャッチされ、私は見事購入してしまった。本当に面白かった。