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物語はテンプレだけど、出てくる料理が全部美味しそう「洋食屋じゃぽんの料理帖 ソップからはじまるフル・コウス (富士見L文庫)」

あらすじ

御一新前から続く老舗料理屋「津ざき」。従兄に乗っ取られた亡き両親の店で、柚子は見習い料理人として働いていた。
ある日両親の墓の前で、奇妙な男を助ける。周という名前以外記憶がない男をしぶしぶ連れて帰ると、店には従兄が訪れていた。
彼は流行の西洋料理を扱うと言いだし、古株の親方と対立。嫌がらせのように西洋料理嫌いの柚子に料理を作るよう命じられた。
「人を幸せにする料理が『津ざき』の心なんだろう。それを作ればいい」
周のひと言で柚子がひらめいた料理とは――?明治洋食浪漫譚!

感想

面白かったー!

テンプレ的なあらすじにしてしまえば「認められていない主人公が相棒の助言を得ながらも周囲の人々に認められていく話」でいいのかな。割とよくあるテンプレながら、同時に王道だから愛されるタイプのお話。
そして料理モノ、最近多いよね。いや昔っから多いんだけど最近更に増えてきた気がするというか。あっちを見てもこっちを見ても、どこのレーベルでもお料理モノがある気がする。
料理モノって描写の上手い下手があるんだけど、この話はめちゃめちゃによかった。食べ物自体の描写が美味しそうというわけじゃなく(それもそこそこは美味しそうなんだけど)、それ以上に食べている人が美味しそうですごく良い。主人公の友人弟の寅吉がどれもこれもをめちゃくちゃ美味しそうに食べてくれるんだよなー……読んでいて本当に幸せになる。

スープ、マヨネーズ、ハンバーグ。そんな現代人だと当たり前の食べ物を、知らない人たちが手探りで作り自分たちが食べやすいように改良しつつ西洋料理として出す。そんなのが読んでいてすごく楽しかった。

主人公の柚子が良い子で良かった……。ちょっと負けん気が強いし他人に頼るらないように頑張っていた少女が、さりげない助けを得て頑張っていく物語は読んでいてとても楽しかった。
柚子の負けん気の強さや他人に頼らない部分も、今まで女だからと周囲に馬鹿にされ料理人として認められず下働きだけだったから、というのも読んでいると納得できてすごく良い。

そんな柚子が助けた周がめちゃくちゃキャラ的に面白いなー。未来から来た人ということは間違いないにしても、一体なんで来たんだろう。
西洋料理を知らない柚子に教えてくれる存在として良いキャラだったし、段々と距離が近づいていくのが良かった。

なんやかんや言われているけれども柚子の従兄、悪い人ではないよね……? 目的はおそらく柚子を守ることではあるんだけれども何を考えてるんだろう。この先が出てきたらこの人の掘り下げが一番みたいかも。

ちなみに個人的に好みのキャラNo.1は八坂院兄だった。いやこんなん誰でも好きでしょ……。チャラくて遊び人で体が弱くて(名目上にしか見えない)ちゃらんぽらんで料理関連は完全にダメダメででも憎めなくて愛しちゃうキャラでちゃらんぽらん……こんなん誰だって好きでしょ……。どんどん出番を増やして暴れまくってほしいキャラNo.1。彼が出てから読む手が止まらなくなった。最高。

連作短編集としてもすごく面白かった。これから先の八坂院兄が気になるし、兄と弟が顔を合わせてどったんばったん大騒ぎしているのが見たすぎるのでぜひとも続きが読みたい。