隠れヲタ同士の恋愛模様「キミもまた、偽恋だとしても。 (オーバーラップ文庫) 」 渡辺恒彦

あらすじ

関東圏のとある田舎町。
岩下学園に越境入学して間もなく、村上政樹は学級委員の長島薫子に「偽装恋人」になって欲しいと頼まれる。
薫子の家は地元では知らない人のいない旧家。
お見合いを回避するための手段として偽装恋人の役を頼んだのだ。
しかし、政樹が薫子の親に紹介されると思わぬ事実が発覚!
それは村上家こそが長島家の主筋の直系だったこと。
そして、あれよあれよという間に、婚約まで話が進んでしまい、2人は引くに引けない状態になってしまって……!?
そんな二人にはそれぞれ相手に対して、一つだけ大きな秘密を抱いていた。
それは「隠れオタク」「隠れ腐女子」という秘密であった。

甘酸っぱい高校生同士の恋愛

うわあああ甘酸っぱい……!

美人系の可愛い子から偽物とはいえ恋人になってくれ頼まれた上、あっというまに両家ご公認の恋人へ。しかしこんなやり方はどうかと思うということで、高校卒業までに彼女を落とすことができたならば結婚も視野にいれることに、彼女を落とすことができなければその付き合いは終わりということに。

この関係性甘酸っぱい!
意識してるのは主人公だけだからヒロインの側は全然平然としてて、よっぽど直接言われなきゃ意識してくれない。だから意識してくれるように頑張るとかかなりグイグイ押していくか直接言わなきゃならないことに、というのめっちゃ甘酸っぱくて可愛い。

下巻の終盤、デートのラストの流れなんて本当に……本当に甘酸っぱくて可愛かった……。

そしてこのカップルは普通の親同士が認定したカップルじゃなく、もう一つ秘密がある。その秘密こそが面白い。

隠れオタク同士の恋愛

タイトルにある通り、ふたりとも隠れヲタ。
主人公はギャルゲーやラノベなどのヲタであり、ヒロインは腐女子。しかし互いに相手を非オタだと思っている、という勘違いからの、ヲタを隠す流れが面白すぎる。

オタクだったらこれに絶対に食いつくはずだ!という渾身の一撃に失敗したあとは、ひたすら互いにヲタ隠し。
しかしふたりとも生粋のオタク、一般人のラインがわからない。例えば一般人が読んでる漫画は? 一般人は休みの日には何してるの? 一般人ってどこまでだったらオタクっぽい用語使うの?
もうこのあたりのすり合わせというか、互いにどこまでがセーフだ……?とさぐりさぐりっぷり本当に面白かった。

互いに相手が非オタだと思っているからこその頑張り、しかしある程度ヲタ用語は通じる、だが相手はオタクじゃないはずだからもしかして一般人はここまで通じる……? という勘違い、面白すぎる。
進撃の巨人あたりのトークで盛り上がるの面白かった……。実際一般人って進撃どのぐらい知っているんだろう。実写映画もあったから知名度あるのかな、どうなんだろう……(ヲタなので一般人のラインがわからない人発言)。
でもリヴァイ兵長の尻の話はストップして良かったよ。それは絶対にアウトだったよ。読んでいてそこで一番ハラハラしてしまった。

秘密を持った人同士のカップルものって読んでいていつそれがバレるかとドキドキして面白いけれど、この本の場合はそれがヲタ事情なので、はよバレてイチャイチャしろ!というのと、バレたらはずいだろうからバレないでくれ……!という強い思いが両方出て来る。

ラノベとかの腐女子表現ってちょっとひっかかる箇所があることもあるんだけど、この本はそういうこともなく、あるよねーぐらいだった。
個人的にすごいポイント高かったの、従姉とサークルの友人が三次をネタにしてBLだよねーって話すのに対してヒロインがそういうのやめて!と止めるあたり。
創作物の腐女子ってたいていそういうとこでわかるーと乗ってくるイメージがあったので意外だったし、同時にヒロインに対して好感度が上がった。

唯一あれっとなったのは従姉のやってるサークルが合同誌しか出してないの?ってぐらいです。
声で魅せてよ~は腐女子である必要性が全くなかったからね。この本で言う「女オタク=腐女子と思われることがあるけれど」というの通りで、あれはただのオタクだろう。

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これはいつもヒロインがオタク系のラノベを読んでいて勝手に感じていることなんだけど、男性読者が多そうな媒体でヒロインがオタクの場合は体感だけどギャルゲヲタが多く、女性読者が多い媒体だと腐男子が多い気がする。

男ヲタもめっちゃ良くて、主人公の友人である男ヲタがヒロインの秘密を知ってしまったときに、それをうまくぼかしつつお前は知りたいか?と聞いてくれるのうまい。優しい。
というかこの二人は本当に良い関係だな。良い同性友人がいるラノベ好き。

てっきりこの上下巻で互いの正体がバレるのかな?と思いきやラストまでわからないまま、あれーという肩透かし。
タイトルに1とついているからには本来は続く予定だったのかな。