小さな疑問が故人の別の一面を描き出す「神様の裏の顔」藤崎 翔

神様のような清廉な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみで包まれ、誰もが涙した――と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり……。

 神様のような前任と思われていた人もちょっとした人間っぽい部分があるよねー、という会話から、次々と他の人の記憶と出来事が繋がっていって、一面だけじゃ知らなかったら絶対に想像できないような側面が現れていくのが面白かった。

 最初の章でひたすら良い父親だった良い教師だった良い家主だったと語られていく流れは、誰から見ても完璧なる善人だったと示す部分。
 それが、次の章、また次の章になるに従って次第にもしかして……の部分が増えていくのが面白いし、善人だったという紹介の箇所すらももしかして……の論拠になるのがまた面白い。
 ちょっとしたことが次の人の物語に絡んでいくのすごい楽しかった。その分度の人とどの人がどういう関係で何が起きたかを覚えてなくちゃならなくて、少し頭を使ったけれど。

 ストーカー被害にあってた子の話が一番流れが面白かったなー。
 自分のストーカーがやったに違いない、先生はありえない、だってパソコンは使えないしスプレーなんて持ってないという彼女の思い出話。しかし読者はその後同じアパートの店子の人の回想によって故人がパソコン技術を習得したことを知ってしまう。
 じゃあつまり……? とドキドキしながらページを捲ってしまった。

 正直50%ぐらい読んだ時点で、登場人物たちが顔突き合わせて何があったか話し合い時系列をまとめだしたあたりで「つまりこれは先生がやらかした事件ではないのだな?」と気付いてしまったのが残念。
 ただ、そこからの謎解き、どんでん返しは最高に面白かった。
 けれど、本当の大オチというか二重人格オチはまたかよ……となってしまったし、別にそうしなくても良くない? と思ってしまったので残念。

 読み終えてから気付いたんだけど、読者は結局一度たりとも「先生」の生きている姿を見たことが無いのか。
 知っているのは他人から語られる姿のみ。そういう意味でもとてもおもしろかった。