日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

名探偵の証明(東京創元社)市川 哲也

 KindleUnlimited対象作品(2016/10/05現在)

 ミステリー、現代。
 名探偵という存在の、その後の物語。

 名探偵というものは、職業ではなく業だ。本人の好む好まざるにかぎらず、名探偵がいる場所に事件はやってくる。……なんて言ってた小説が何かあったなあというのを思い出した。なんだっけ。
 なにはともあれ、これは老いさらばえた名探偵の物語。事件が彼のところにやってくるのが名探偵である証拠だというのなら彼は未だに名探偵であるけれども、解決能力の衰えてしまった今、彼は名探偵という業に捉えられたままだけれどももう名探偵としてやっていけないのだなと思う。

 過去名探偵だった男に自信を取り戻させるためにというあたりでだいたい物語の全体の構造は把握でき、また黒幕までは想像がついてしまった。そりゃあ狂言しかないでしょう……。竜人の前半でのアゲアゲっぷり描写でも、きっとこいつが何かあるだろうとは思えたし。とはいえというか、だからこそ、読者ですらすぐに察してしまうのを『名探偵』である二人が全く察せられないのがちょっともどかしかった。一応ふたりとも理由はあったとはいえ、そこ! 多分そこが原因! ともどかしい気持ちでいっぱいいっぱい。

 しかし、老いてしまった名探偵というキャラクターはすごく良かった。たいてい名探偵って年老いても名探偵というか、ミス・マープルを始めとして、年老いてからこそ知識を蓄え探偵としての能力を高めるというイメージがあった。それが見事に覆された感じ。よく考えたら確かに思考能力は落ちるし感覚も鈍るよなあ。ゆっくりと思考する安楽椅子探偵としてはいけるのかもしれんが、殺人事件を足を使って探す探偵というのは難しいのかもしれない。

 ラストに思わず「ジェットマンかよ!」と言ってしまったがジェットマンはまた違う。
 鮎川哲也賞っていうけどあんまりおもしろくなくて残念。
 続編もあるみたいだけど、こちらは蜜柑がメインなのかな? それともこの本も蜜柑が表紙なのと同じように、特に主人公というわけじゃないんだろうか。

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