日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

されど罪人は竜と踊る 17: 箱詰めの童話 (ガガガ文庫)浅井 ラボ

 五大音楽祭のひとつエリダナ音楽祭が迫る。その開催地、東西大国の狭間であるエリダナの地に生きる攻性咒式士のガユスとギギナ。二人の事務所は、<宙界の瞳>から始まった数々の惨劇を生き延び、勇名を馳せるようになった。それゆえに、ガユスの意志に反し、同僚のメッケンクラートたちは、空席となったエリダナ七大手の席を狙うことを望む。
 揺れる事務所へ、師ジオルグの後継者を名乗る攻性咒式士フロズヴェルが来訪。ガユスたちに手を結ぼうと提案するが……。
 そんな折、ガユスたちのもとへ、エリダナ音楽祭に出場する謎めいた歌手ルル・リューからの依頼がくる。彼女に脅迫文を送りつける犯人を突き止めるべく、ガユスとギギナたちは護衛と捜査を始めるが、エリダナに襲来した<世界の敵の三十人>の一角、ハイパルキュまでもが、なぜかルルを狙う。
 何度倒しても蘇生する箱頭の怪人ハイパルキュに打つ手はあるのか?
 七大手の席とルルを廻って、エリダナに嵐が集まり、吹き荒れる。
 赤の<宙界の瞳>は、すべてを見つめるかのように妖しく輝く。

ファンタジー、アクション、いつものされ竜。
さすがにちょっと冗長にすぎるのではないか? と思った今回の巻。

とりあえず今回の巻の出来事として

  • ラズエル社のほうより、とある博士が行方不明になったため探して欲しいという依頼→比較的速攻で取り消される
  • ルル・リュー(ガユスがファンをしている歌手、以前短編に名前だけ出てきたり、1巻で確か鼻歌を歌ったりしている)による護衛依頼
  • オルグの後継者を名乗る咒式士・フロズウェルの登場、敵対
  • エリダナ七大手に入れるか問題
  • ルル・リューを狙うモノの中に、世界の敵の三十人の一人であるハイパルキュが現れ、いくら殺しても死なない

だいたいいつものこんな感じ。あらすじそのまんまみたいな内容だけれども、実際内容がそんな感じなので他に付け足すものもあまりない。
今回は伏線をばらまくだけばらまいておいて、次の巻で回収するための物語かなという感じ。これで次の巻で終わりません! なんて言われたらちょっと怒るけれど。

よく言われているけれども相変わらずパワーインフレがやばい。ガユス&ギギナの時点でそうそう並び立つ者などいない到達者たる十三階梯なのだけれども、それと戦っても勝てないやつが出てきすぎている。なんか十三階梯って前はものすごい強いものの称号みたいに使われてなかった? 気のせい?
今回出てきた蛙男もだけれども、普通の咒式したちが束になってかかって、さらに剣舞士たるギギナがぶつかっていっても勝てないような相手って、もうパワーインフレってレベルじゃないし、咒式士の階梯認定おかしいよ。今回の巻から一応改定されたっぽいけど、それでもちょっとおかしいよ。
ロズウェルもハイパルキュも馬鹿みたいに強いし国をぽんぽこ滅ぼせるレベルだし、そのうち大陸や星を滅ぼせる相手も出てきそうな気がする。パワーインフレの大安売りだ。

伏線回だけれども、今回さり気なくでかい情報がぶちこまれていて、

  • イーギーとジャベイラ、ラルゴンキン事務所からの独立(台詞で一瞬言われただけ)
  • ガユスとジヴ、結婚(2pぐらいさいて一応説明あり)

すごくさらっと重要そうなポイントが出てきて去っていった。駄目だろそこ。短編1本ぐらいかけてがっつり説明してほしい。とくにイーギーとジャベイラのところ。

読んでて地味に、ガユスもギギナもすごく真人間になろうとしているなと思った。例えばスニーカー版1巻のころのガユスは「親兄弟が目の前で殺されても平気で飯を食えるのが咒式士だ」みたいな発言をしているけれど、今回子どもが目の前で殺されて激高しているガユスからはそんなところが見られない。きっとこのガユスはジヴが目の前で殺されたら飯は食えないし、そもそもそんな発言自体をしない気がする。
同じようにギギナも他人のことを気遣ってみたりとすごく真人間のような雰囲気になってきている。スニーカー版初期のどこかどころではなくトチ狂った二人が、いがみ合いながらもジオルグ事務所のことを思い、他に人間をいれられずにいる、つるめる相手を得られずにいる雰囲気が好きだったので、最近のとても真人間化し、あまつさえ集団事務所で他人を束ねているところを見ると、なんだこれ……と思わずにはいられない。

ただそれでもガユスがナチュラルクズの片鱗を残してくれているのはちょっとうれしい。
自分が別れた女の結婚式に匿名でプレゼントを贈ろう! まではまだ良いけれども、その相手、、未練があった元カノを強姦→相手が自分に未練があることがわかって復縁→結婚しようね!と言っていた今カノに別れを告げるというガユスのクズっぷりがナチュラルに天元突破している相手。そんな相手の結婚式に、プレゼント贈ろうなんて考えるなよ……。お前のことなんて思い出したくもねえよ……という感じがスニーカー版のクズっぷりのあるガユスの片鱗が見えた。匿名でもだいたい察しちゃうものでしょう。最高にクズでとても良い。

個人的にガガガ以降のジヴーニャが聖女様していて好きではないので、今回も登場が多くてあまり嬉しくない。スニーカー版の2巻ぐらいまではすごく好きで、ずっと幸せになってくれ、幸せになるためにはとりあえずガユスと別れたほうがいいよと思ったし、アナピヤ編で別れた時はこれで良い男捕まえて幸せになってくれ! とまで思った。だがそれ以降のジヴはとにかくあげられっぷりが気持ち悪いし、咒式士じゃなきゃついていけないはずの咒式士同士の戦いで平気でついてきたりとちょっと常人ですらないので、出番があると嬉しくない。
耳かきのあたりのシーンとか正直いらんわ……と思った。スニーカー版のジヴがされててきゃーきゃー騒いでいるんだったらきっと好きだったんだろうけどな。

600pあったけれども物語としては伏線張りと状況説明。ラストに動きはあったけれども、前のどこかの巻でも思ったけれど、頭の100pとラストの100pだけ読めばある程度内容が把握できちゃうんじゃないか? と思うぐらい真ん中らへんは冗長にすぎるし同じことを繰り返している。ハイパルキュ出てきた時に軽く倒したシーンで、ああこれ間違いなく中盤あたりで超絶強いキャラとして再登場するし、殺しても死なないだと……? って言い出すなと思ったら本当に言う。それでも一応次の巻は買ってしまうのだろうな、と思うあたりが悔しい。
あとこれ、地味に気になってたんだけど、キャラの口調が平坦というか、特にジヴの台詞が「私はそうだと思っていた」「きっとガユスならばそうしてくれる」というふうに、ちょっと固めで地の文みたいな感じのが多くて、それがずっと気になっている。どの巻あたりからか、すごくそれが増えた印象。

ところで次の巻の表紙は今回の巻と対っぽくてなんか良い。かっこいい。

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