日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

ヴァルハラの晩ご飯 ~イノシシとドラゴンの串料理~ (電撃文庫)三鏡一敏

ヴァルハラの晩ご飯 ~イノシシとドラゴンの串料理~ (電撃文庫)

第22回電撃小説大賞<金賞>受賞作

神界の台所“ヴァルハラキッチン”の夕飯時はいつも大忙し!ボク、喋れるイノシシのセイは主神オーディンさまの指名を受けて、そのお手伝いに来たんだ。―『料理される側』としてね!いや、確かにボクは「一日一回生き返る」っていう不思議な力を持ってるけど、でもだからって「毎日死んでご飯になれ」ってひどすぎない!?…まあそのおかげで、美しくて可愛い戦乙女・ブリュンヒルデさまのお傍にいられたりするから、すべてが辛いわけじゃないんだけど…。って、あれ、神界ナンバー2のロキさまがなぜここに?え、神界のピンチだから一緒に来い!?いやぁ、ボクただのイノシシですからってうわあああぁー。第22回電撃小説大賞“金賞”受賞作!神々の台所を舞台に贈る“やわらか神話”ファンタジー!

ファンタジー、ギリシャ神話、恋愛、ほのぼの。
増え続けるヴァルハラの生き物のご飯となるために、死んでもよみがえるイノシシが食材になりつつ見習いコックとして働くうちに、いろんなギリシャ神話の神々と仲良くなる話。

まさかのイノシシ。まさかのイノシシ主人公。
イノシシ主人公なんだけれども中身は普通に少年っぽくて、けれども見かけはイノシシで、その差異が面白かった。
可愛い女の子のおっぱいに顔を埋められたら当然嬉しいし、窒息しかけようともギリギリまでがんばる。大好きな女の子に抱き上げられたら当然嬉しいし、足の間に置かれたら太腿のあたりに全力でくっついてみたりする。そんな、普通の少年がやったらドスケベ一発アウトラッキースケベでもそりゃねーわなことだって、外見うり坊的なイノシシならばあら不思議、可愛いマスコットがくっついている状態になる。
その差異が読んでいてとにかく面白かった。思考は中学生男子っぽい煩悩まみれな部分もありながら、でも僕は紳士! と自分を律しようとする(できてない)感じがとっても面白い。
エロガッパ的なキャラやラッキースケベキャラはあまり好きではないのだけれども、主人公イノシシ・セイは、イノシシであるせいか異性にろくに異性認識されていない。唯一片思いの相手であるブリュンヒルデからはそういう対象として認識されているようだが、それ以外からはただのうり坊、イノシシ程度の扱い。故に読んでいて嫌な感じが全く無かった。
とはいえ、ロキとのボーイズトークはまたこちらもとっても普通に男子会話していて面白かった。方やかなり若作りの年寄り神ロキと、かたやイノシシなのだけれども。

物語的には主人公イノシシ・セイの魅力というかキャラ付けがでかい部分もあるのだけれども、話の流れ自体も面白かった。

料理の食材として使われるという、つまりは毎日死を繰り返す。注射は痛いだけだとわかっているけれども怖いのと同じように、生き返るとわかっていても死ぬのは怖いことには変わりない。こういうさりげない死への恐怖に対する描写なんかがわかりやすく、よみやすくて好き。

終盤の展開がさりげに熱い。何度でも生き返る主人公イノシシの、生き返る仕組みの解明。再生を利用して行われるドラゴンへの攻撃は、事前に提示されている情報を使っているとはいえその方法があったかと。
それがあったか! と読んでいて面白かったし、熱かった。死ぬことは怖いと事前に提示されているからこそ、ブリュンヒルデを助けたいという思いやそれ以外の様々な感情を持って戦う主人公がかっこいい。基本イノシシだけど。
あのあたりブリュンヒルデがただの触手プレイ要員になりかけているのがちょっと勿体無い。かっこかわいい女の子! っていうイメージがあったので、守られるだけではなくもうちょっと動いて欲しかったかもしれない。

食材とされるイノシシが主人公とあらすじには大々的に描かれているわりに、食事に関する描写は殆ど無し。ロリ搾乳シーンと、イノシシによる出汁取り・肉取りシーンがメインか。あまり料理ラノベという感じではなかった。
飯自体の描写もそこまで美味しそうなわけではなかったけれど、物語的にはそれよりもギリシャ神話のおもしろおかしい神々と仲良く楽しく生きようと思う主人公イノシシという部分がメインだったのだからこれで良いのかも。

惜しむらくはキャラが多すぎて掘り下げが少ない&覚えづらかった。ブリュンヒルデやロキは覚えられたけれども、姉妹の○人目は誰? なんて言われるときついかもしれない。
全員魅力的だから、続刊があるとしたら他の姉妹もそこそこメインに据えて書かれたのも読んでみたい。

続きが気になると思うぐらいにはもうとにかく面白かった。飯じゃなくて神様仲良しファンタジーという感じ。同じキャラをメインに据えた続刊が読んでみたい。  

個人的な話ですが、○○賞受賞作って結構好きです。そこのレーベルカラーに絶妙に外れるか外れないかぐらいのものが出てくることがあるのも魅力的だし、どちらかというと単巻完結モノが好きなので確実に1巻でそこそこまとまっていることが確実なのも魅力的。このキャラで続きを読みたい! と思うこともあるけれども、話が尻切れトンボで続刊へ続く! とやられるのがあまり好きではない。
電撃はあんまりレーベルカラーが合わないことが多いのですが、それでも君のための物語などはドツボだったことを覚えています。この作者さん好きで、そして、誰もが嘘をつくも! 楽しみにしてたんだけど、ちょうど発売日の次の日地震でしばらく本屋さん自体が開かなかった思い出。

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