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日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

最後の王妃

★★★★★ 読書 読書-ライトノベル

最後の王妃 (コバルト文庫)

ルクレツィアは、15歳でアウガルテン王国の皇太子妃となった。しかし皇太子シメオンは一度も彼女の部屋を訪れることはなく、後日、シメオンがマリーという下働きの娘を愛していると判明。ほどなく国王が崩御し、ルクレツィアは王妃となった。そして側室となったマリーが懐妊。それでも王妃としての務めを果たそうと懸命なルクレツィアだったが、隣国に攻め込まれた王国は敢えなく陥落し…?

中世ヨーロッパぐらいのファンタジー、遠距離恋愛、波乱万丈もの?
とある国の最後の王妃であった女と、その国を戦で奪いとった国のトップっぽい男の話。……と書いてしまえば姫と騎士ものでエロを連想してしまうけれどもそういうんじゃなく純愛というか、男の影が薄いというか。

政略結婚したものの、旦那である王に愛されなかった王妃ルクレツィア。王は彼女ではなく、下働きの娘であるマリーを愛していた。自分の役目であるからと王妃の役目である慰問やその他のことは果たしつつ、側室となったマリーに対してどうしても真っ直ぐに良い感情を抱くことは難しいルクレツィア。しかし、ある日隣国より攻めこまれ、自国は陥落してしまう。

王妃として生きるために生き、王妃として過ごすために勉強し、王妃としてあるために様々なことを成し遂げていたルクレツィアが、王妃でなくなった後どうなるかみたいな物語でした。このルクレツィアの王妃であるためにという流れが、なんというか痛々しくも格好いい。

「アルバーン殿下、王宮はすみやかに明け渡します。国王陛下と、幼い王子の命に免じて、王宮から逃げる者たちの命を、どうかお助けくださいませ。そして都の、この国全土の民には、どうか温情をかけていただきたいのです。彼等には何の咎もございません。至らぬ王と、至らぬ王妃がこのような事態を招いたのでございます。エインズレイ国では、民は皆豊かで、王家は国中の尊敬を集めていると聞き及んでおります。どうかアウガルテンの民のことを、支配国の奴隷ではなく、自国の民と同じよう慈しんでいただきとうございます」  ここで初めて、ルクレツィアは膝を折り、アルバーンへ頭を垂れた。
「わたくしの命で贖えるものがございましたら、すぐに差し出しましょう。この国の王妃、この国の母として、伏してお願いいたします。どうか我が子をお救いください」

王妃としてあるために、どうしたらいいのかを知っていて、それを成すために生きてきたんだなあ、と。
国が陥落してからのルクレツィアは、ぶっちゃけ平和で生きてて少し心が楽そうだなと思いました。畠を耕したりしているあたりだとか。王妃としているときよりも他人を愛し、他人の顔をちゃんと見るということを知れて可愛いなと思った。

ルクレツィアのところに来た手伝い兼医術の心得のある少女ティアナが強くて格好良かった。様々な理由はあれど、物語においてだいたいでルクレツィアを守るのは彼女。可愛くて強くて素敵な彼女でうわーめっちゃ好み! と思ったけれど、あとがき読むに彼女が当初主人公だったんですね。なんかわかる。かっこいいもんな。
対して、主人公の相手役であるメルヴィンの出現率の低さがちょっと気になりました。一応最後にずっと見てたという落ちを付けてくれるけれども、でも出現率本当に少ないし、顔を合わせている時間ってものすごく短いんじゃないのかな。とはいえ、それだけの期間片思いをしていたから、ルクレツィアと離れることは物語終了後は無いんだろうなと思えました。

ルクレツィアは、自分が笑顔を向けなかったからシメオンは自分と夫婦とはならなかったと思っているようだけれども、多分それは違うんだろうなと思いました。なぜなら、メルヴィンは笑顔をろくに向けられること無く、凛とした姿でそこで王妃として立っているルクレツィアに惚れたのだから。
結局は男女の機微だし相性だし、物語的にと言ってしまえばあれですが、シメオンはルクレツィアの運命の人ではなかったんだろうな、と。ただ、そのシメオンもなんだか可哀想な人で、マリーはマリーで別に好きな相手がいるもんなあ……。シメオンもこころの弱い、哀れな人だったんだろうなと読み終わってからはむしろ思う。

分量的にもかなりの濃ゆい内容だったので、読み終わってから文庫数冊分読んだような気分になった。すごく面白かった。 ヒロインが痛々しい目に遭うのとか可哀想な目に遭うのが苦手な人はちょっときついかも。前半ほとんどずっと可哀想状態だし。だからこそ後半の一気に幸せになるところが良いのだけど。

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