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日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

親不孝長屋――人情時代小説傑作選

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親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫)

岡場所上がりの継母と継子のすれ違い(「おっ母、すまねえ」)。妹弟から冷たい仕打ちを受ける行き遅れの長女の行く末(「邪魔っけ」)。料理屋に奉公した十七の娘とワケありの老父とに降りかかる難儀(「左の腕」)。元芸妓の女房を持つ棒手振り魚屋の定次郎は、実は大店の次男坊(「釣忍」)。病弱な八つの娘のいる畳職人は高額の薬代を稼ぐために…(「神無月」)。感涙必至、傑作人情時代小説五編を厳選。

親子が題材にされている歴史小説傑作選。やっぱり傑作選っていいなあ、巨匠の美味しい部分のみつまみ食いできる感じでとても良いです。
今回題材にされている小説は全部どこかからの再録のようですが、読んだことがあるものはなし。

 

親子ものが元々非常に好きなのですが、今回ツボだったのは平岩弓枝の「邪魔っけ」。
豆腐屋の親父と、その長女、次女、三女、長男。働き者の長女と、ろくに家の手伝いもしない次女、最近その次女に似てきた三女、年上の女のところに入り浸っている長男。次女は、働き者の長女が行き遅れだから自分は嫁の貰い手がいないという。長女が働き者だから、それと比べられて自分は怠け者と言われると言う。そんな、妹弟たちから八つ当たりの対象とされ、家の外の人からは愛されているけれども家の中では……という彼女の物語。

彼女自体にきっと悪いところはない、長女はずっと家族を大事に思ってきたし、次女や三女たちが全然手伝いをしないからその分豆腐屋の仕事を手伝ったり麦湯屋のバイトをしたりしていた。そんな彼女は全く悪くないんだけど、彼女を疎ましく思う妹弟だって言い分がある当たりが辛いです。

「そうよ。だから、あたいはおかよがかわいそうだって言ってるのさ。姉ちゃんみたいな評判のいい女の妹に生まれるとね、なにをしたって目立たないし、普通にしたって怠け者だ、甲斐性なしだって言われるのよ。世間はそうなんだ。姉ちゃんを良い娘だって誉めるついでに、それにひきかえ妹は、と、くるんだ。そういうふうにきまってる。駿河屋さんの手伝いん時だって、あたいがいくら働いたって姉ちゃんにゃかなわない。姉ちゃんは働き者で、あたいは役立たず、みんなそういう顔であたいを見るんだ。おかよだってその通りだ。だんだん、あたいの二の舞いさ」

姉は悪くない、妹だって頑張ってた、ただちょっと働き者すぎる姉の下に生まれてしまった妹の立場としては何もないのだ、って読んでて辛かったです。
最後、長女おこうは旦那が決まって、二十五のちょっと遅い年齢だけれどもちゃんと嫁に行く。そして彼女がいなくなったことで、家族たちの歯車も綺麗に回り始める。彼女が頑張っていたことこそが妹弟たちの成長を妨げていたのだと物語的には落ちがつくのですが、結局誰も悪くないが故に地味につらい物語だなあと思いました。でも、おこうが幸せになれてほんとうに良かった。

この話で平岩弓枝がキになったので、他にも何冊か読んでみたいです。
これ以外にも、松本清張の「左の腕」もすごく面白かったです。こういうのがあるから短篇集はたまらない。

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