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日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

駄弁りながらの歴史の謎解き「本能寺遊戯」

 

本能寺遊戯

本能寺遊戯

 

 

歴史好き女子高生トリオの「歴史ミステリー」

漫画アニメゲームでの歴史が好きなアサさん、同じく漫画アニメゲームでの歴史知識たっぷりの留学生アナスタシア、彼女らと違いきっちりと史実としての歴史が好きなヒメが、ライト向け歴史雑誌「ジパングナビ」の賞金に釣られ、歴史の謎についてああだこうだとおやつを食べながら駄弁るお話。
もともとミステリーフロンティアというレーベル自体が好きでインディゴの夜や田舎の刑事シリーズなんかも読んでたのでそういった理由と、また、本能寺の変に関連してそうなタイトルなので読んでみました。

女子高生が三人合わされば文殊の知恵

だいたいジパングナビで出てきたお題に対してアサさんが突拍子もない面白さメインの視点から、ヒメがしっかりと史実に基づいた視点からそのお題を紐解いていくのですが、それが面白い。

読後の感想は「NHK-FM青春アドベンチャーで聞いてみたい」かなあ。
ドラマよりもラジオドラマで聞いてみたい。女の子三人がだべっているハナシ、絶対おもしろいと思うんだけど。時々再現ドラマみたいなボイスもいれて、なんて思ったけれど、青春アドベンチャーだと15分×平日5日×2週間だし、どれぐらいなんだろう。
この小説は謎解き4本+1本おまけみたいなかたちの短篇集なんですが、それだと1周間で1本とかになっちゃうかな。1日に1本じゃあヒメの長い話が全部やりきれないし。となると、新日曜名作座で1ヶ月ぐらいかけてとかかなあ。とにかくラジオドラマで聞いてみたいと思う作品でした。ドラマじゃなくて、ラジオドラマ。

 

ヒメのしっかりと史実をソースに出してくる感じすごく歴史オタクって感じで可愛いです。最近じゃお遊び半分として消費されてってるけど史実は史実で楽しむものなの、謎なんて無いの! というポジションのヒメが、がんこオタクっぽいけど可愛い。

「史実通りに歴史を楽しめない、可哀想な人がたくさんいる。それだけの話。なんでそんな人達の好みに合わせて、現実の歴史をいじらなくちゃならないわけ? いっておくと多数決で決めていいなら、堅気の歴史家やまっとうな歴史ファンは、裏も表もない光秀の謀叛を支持する人が大多数よ。けれども、当たり前の話は今更話題にならない。犬が人に噛み付くのは珍しくない、あべこべに人が犬に噛み付いたらちょっとした騒ぎになる。興味本二のろくでもない珍説ばかりが持て囃されるのも、わかりすくいったらそんな理屈」

この台詞超かっこいい。いつか使ってみたい。私はその史実通りに歴史を楽しめないかわいそうな人のポジションですけど。

春日局の話についての時なんて、そこまで歴オタなわけじゃないアサさんとアナスタシアのために、図書室からきっちり資料をコピーして持ってきているあたり、教えてあげたいオタクッて感じがします。
そしてこのヒメの知識がとてつもなく広いのね! アナスタシアがぽんと持ってきただけのものについて、だーっと歴史から神話から知識を引っ張りだして一気に話すの本当に格好いい! きっちり自分の知識として身についている感じがすごい。小説の受け売りとは言うけれども、これだけ即座に出てくるのだから小説自体もしっかり読み込んでいるんだろうなー。
ただまあ、個人的には、たかだか女子高生一人が思いついたそれを歴史学者が見つけられないわけがないので、ヒメのあれこれそれもなんだかんだでただの思いつきで、彼女が嫌がっている史実ではない面白さとしての部分に引きずられちゃってるんだろうなーと思いました。
ヒメはこれだけいろいろ調べて(しかも春日局のあたりは言われる前に次善に資料集めてるあたり、もしかしてジパングナビ確認してお題見てわざわざ資料集めたのかもしれない)頑張って考えてるのに、友人二人に言うばかりでジパングナビのほうには全く評価されてないので、どこかで彼女の書いた説が奨励賞でもいいからひっかからないかなーって思います。でも、ガチの歴オタっぽいヒメが応募する先としてジパングナビが間違ってるのかも。彼女はもっとガチっぽい雑誌に応募したほうが似合う。

私のポジションはむしろアサさんに近いというか。

「パズルのクオリティか、ヤマトタケルのドラマとしての面白さか。ここのところが判断の分かれ目。考証ゲームとしてなら合格点だからといって、それで他人さまの興味を惹くことができるかといえばまた話が違ってくる。歴史に詳しいわけでもない人たちがターゲットの場合はなおさらだ。大阪夏の陣のヒーローは真田信繁じゃなくて、真田幸村じゃなくちゃ意味が無いんだ」

これはアサさんのジパングナビの賞狙って目論んでるときの台詞だけど、まあそうだよね、そうなんだよ! ってなります。
というか、アサさんの台詞だいたい妙に納得できちゃってw

面白ければそれでいい、漫画アニメゲームからの知識でやってくぜ! という感じなので、アサさんの発言やスタンスにはとても共感を覚えました。そうなんだよ、面白いっていうのが大事なんだよ! 黒幕がいたほうがエンターテイメントとして楽しいし、その黒幕は黒幕なんだからその策略が気付かれちゃあいけない。そうなんだよそれなんだよ! というか。めちゃくちゃ共感する。しかも応募する理由とか考えても、ああこの子めっちゃ私近い部分ある……ってなってました。
しかし、アサさん文系だった。現代語訳されていない古文が読めるぐらいには文系だった。理系だった私はその部分全く読めなかったのでアサさんすげーってなりました。

ライト層は、とにかくセンセーショナルな事件を求めている

お題になるのは本能寺の変ヤマトタケルとその剣、春日局の権力、宇佐八幡神託事件。そしてそれの締めくくりとして、ジパングナビィの編集者さんにお寿司を奢ってもらいながらのお話となります。
この編集者さんとの話が個人的にはすごく納得できたなあと。
私もライト層なんでわかるんですけど、ヒメの言うとおり、大抵の歴史の事柄は謎なんてなくて、言われているその通りかもしれない。でも、歴史に脚突っ込んでみた程度だと、何かしらセンセーショナルな雰囲気で、ワイドショーにでもされてるようなモノのほうがエンターテイメントとして面白いんですよね。結局のところ。特に私みたいな新書は読む気ないわー歴史小説でエンタメとして楽しみたいわーみたいなやつは特に。面白く脚色されてるほうが見ているほうとしては楽しい。
それに、本当に編集者さんの言ってるとおりだなって思ったのは「人名が多いと理解しづらい」。ほんとこれ。

「煩雑な原因の一つは、検証のために出てくる名前がやたらに多いことがあります。これはよろしくない」
「よろしくないんですか?」
「近頃の歴史ドラマや歴史小説を見ていると、登場人物が妙に少ないなと思うことがあるんです。その上、出てくる名前が有名人に偏っていて、知名度のやや落ちる、本当なら登場しないとおかしいような関係者の出番はばっさりカット。それこそ、まるで有名人だけで歴史が動いていくような展開ばかりというくらいです。タイトルはあえて挙げないでおきますが」
「ああ、それならウチにも心当たりが」
「聞く所によると、あれは作り手の不勉強というわけではなくて、作り手面で想定する、一般的な視聴者、読者の程度に合わせてあるらしいんです」
「うん……?」
「視聴者や読者の大半はそれほど歴史に詳しくない。知らない名前を次々に出されると敬遠してしまう。だから、登場人物をなるべく有名人で固めて、全体の人数を減らされることになる」

……なんとなく某大河ドラマ思い出した。今やってるやつとか。全部ヒロインにおっかぶせりゃいいわけじゃねえぞというか山田の市ィ出るのまだっすか。

まあ。これが理由で、私はヒメによる宇佐八幡神託事件をほぼ全部読み飛ばしました。出てくる人名多すぎるし、馴染みがなさすぎて。そうなんだよ本当にそうなんだよ! 知らない人名がたくさん出てくると理解しきれないし、誰だかわからない。通りすがりとしてぽっと出てくるだけの人なんていちいち覚えていられない。この小説だとアナスタシアがいるおかげで台所の飯炊き女さんとかわかりやすい表現もされるんだけど、基本的にわかんない。だから軽く足を踏み込みたい、ちょっと鼻先突っ込んだだけの人間が興味を持つには、人名を減らしてセンセーショナルなかんじにするほうが、ってなるんだよなあ。
だから、元禄赤穂事件の真の黒幕は浅野さんちと上杉さんちを同時に取り潰したい柳沢吉保だった! みたいな黒幕説は楽しいんだよね。吉良忠臣蔵のことです。わざと二人が角突き合わせるように柳沢がいじくったのだった! とか最高かよ。

ヒメの話す神話や史実を元とした説は、出てくる時代や用語が多岐にわたり、必要知識がすごくたくさんになる。
本能寺遊戯では基礎としての本能寺の変についての最低限の知識と、それにプラスして更にイザナギイザナミの神話の世界のもの、ついでにどこの神社に誰が祀られてるかレベルのハイレベル知識が必要なのできっつい。2話めの三種の神器の話だと源氏だかなんだかの話も加わってくるし、3話目の春日局の話も春日局の子供が云々みたいになってくる。出てくる人名も多いしついていくのがかなり大変、アナスタシアに教えるという名目で一応説明も入るもののそれでも人名は多いわ関係性は複雑だわでついていけない。4話目の女帝が云々に関してはもう全くわからなくていいかんじに読み飛ばした。本能寺の話についても、幼いころに読んだ古事記の絵本だったか日本書紀の絵本だったか、あれの知識がなければ本当に全くついていけないところでした。
この点について、スニーカー文庫から出てる「問題児たちが異世界から来るそうですよ?」も神話だの史実だのなんだのがかなり出てきて主人公の十六夜さんの思考先読みするにはかなり事前知識が必要だったんだけど、そんなレベルじゃないもんなあ。問題児はうっすらさらっとだったけど、これはぎっちりみっちり端から端まで知識が必要だし。このヒメの話についていけるアサさんも何気すげー知識あるよね。少なくとも高校日本史の範囲、なのかなあ。私は日本史未習得なのでちょっとわからないのですが。高校は地理Bと世界史A(両方赤点常連)でした。

読むならば気合を入れて

読むならば、わからない用語があろうともそれでも気合で読める人か、事前知識がある人のほうが向いているのかも。
いちおう気になったので、同じ作者の漂流巌流島が読みたいです。元禄赤穂事件についてもあるし。

漂流巌流島 (創元推理文庫)

漂流巌流島 (創元推理文庫)

 

 

元禄赤穂事件関連で、アサさんが好きな突拍子もない話といえば「チュウは忠臣蔵のチュウ」かもしれない。

チュウは忠臣蔵のチュウ (文春文庫)

チュウは忠臣蔵のチュウ (文春文庫)

 

私はこの作者の「ハナシがちがう!」が好きなので読んだんですが、まさかそう来るかと。浅野内匠頭生きてるしねw あと堀部安兵衛がアル中。内容かなり突拍子もないかんじで好きです。
同じ作者の「元禄百妖箱」もなかなか。大石内蔵助の腕に浅野内匠頭の人面瘡が浮き上がってきたり、堀部安兵衛が未来が見えたり、綱吉と柳沢が人間ですらなかったり。この本は冒頭でポカーンとさせられました。

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