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日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

死ぬものが忠臣ならば、生きる者もまた忠臣「最後の忠臣蔵」

読書 読書-歴史小説
最後の忠臣蔵 (角川文庫)

最後の忠臣蔵 (角川文庫)

 

忠臣蔵物語のその先の物語

ちょっと前の記事で「その日の吉良上野介」を読んだと書いた時、次は最後の忠臣蔵が読みたいです~みたいなことを最後に書いた気がします。
有限実行で読みました。

その日の吉良上野介で感じたとおり、全体的にとても読みやすい文章です。するする入ってくる。
全体的に現代文に近いからかな、違和感なく読めました。

格好いい寺坂吉右衛門

「ならば言おう」
 吉右衛門は勃然たる怒りをこめて言った。
「おぬしは、侍同士白刃を交えていのちのやりとりをしたことがあるか」
「…………」
「相手は謙信公以来、武名を以って鳴る上杉侍、しかも味方に倍する敵勢と、半夜にわたってしのぎを削った。その者をいのち惜しんだと言われる美濃大垣侍の、道場剣術がいかほどのものか、見せていただこう」

もう寺坂吉右衛門がとにかく格好いい!
上記引用の部分、知り合いが馬鹿にされたことで静かにキレるみたいなシーンなんですけど、こうやって静かにキレるシーンがすごく格好いい。

このシーンだけじゃなくてどのシーンでも格好いい。

討入で死を近くに感じすぎてしまったためか、それともその後の死から逃れてしまったためか、どこか淡々としている寺坂吉右衛門が格好いいです。
自分の立場を公にしちゃだめなのに、それにもかかわらず思わず相手にこうやって言ってしまうところすごく格好いいよー。

やらかしたことがやらかしたことで、寺坂はあまりおおっぴらにお江戸だのなんだのは行けない。序盤のうちは追手も来る。その状況の精神的な苦痛とか半端じゃ無いだろうに、それでも生きる。その寺坂の、生きなければならないというものを背負った上での生き様は格好良かったです。

大石内蔵助の意図が張り巡らされる

寺坂もだけれど、この討入後の物語においてまあ大部分において既に死んだ人である大石内蔵助が格好いい。
物語自体におおっぴらに出てくることはあまりないのだけれども、今まで大石が細やかな気遣いを見せてきたり金を渡してきたり、そういった人たちが、寺坂吉右衛門の助けになってくれる。

寺坂は「討入と歴史の生き証人となるため」に大石内蔵助によって生きることを命じられるんですが、当然公儀に楯突いた者としてあまり良くは扱われない。そういう場面で助けてくれるのが、今まで大石が目をかけていた人たちで。
大石は、討入の際、あえて行き場のない者だけを参加させることにした。故に、行き場がある、生きる場所がある者たちは参加させなかった。その生きる場所のある人達が、大石のためにと寺坂を助けてくれる。大石内蔵助が、大石内蔵助のおかげで。そんなことを言いながら。

もうとにかく死んだ人間くせにとにかく格好良くて……。もういないのに物語の裏で笑顔でいるのが見えるような、そういう人でした、大石内蔵助

最初は「公儀に対して浅野内匠頭切腹について問題提起をする」討入、そして寺坂の中盤の行動によって「その赤穂浪士切腹について問題提起をする」という物語へと移動する。そのあたりも、きっと大石内蔵助の策謀の内だったのかもしれない。その問題提起をするのも大石が過去に目をかけた人物だし、全てにおいて大石の巡らせた意図が巡り回っているなあというかんじがたまらないです。

まだ生きている人間たちによる、幕府への問題提起。彼らの行ったことは、最終的には「浅野内匠頭に対する切腹は正しかったのか?」という問いかけにつながっていると思います。
彼らは、生きているということで物語のその先を紡ぎ、彼らの主君の汚名をすすぐために動いているのかなと思いました。
討入をして死んだ赤穂浪士らが忠臣ならば、その前も生きて先を描いた彼らもまた忠臣。浅野の遺臣らが忠臣ならば、彼らに対して戦った吉良の家臣らも忠臣なのではないかと、そう感じる話です。

シーンが鮮やか

「他のものは、それぞれ局所で戦う。そち一人はその戦場を駆け巡り、その総てを見聞きするのだ。局所の有利不利と共に、全般の形勢を判断して、誤りなくわしに伝えよ。それを以ってわしは味方を勝利に導く。それがそちの最も大切な役目である
 吉右衛門が奮起したことは言うまでもない。彼は内蔵助の言葉通り戦場となった吉良邸を駆け巡った。ある時は敵味方の交刃をよそ目に駆け抜け、また侍長屋の屋根から俯瞰したりもした。折柄の横殴りの雪霙に鮮血が飛沫くのを見、怒号と叫喚と刃金が撃ちあう響きを耳にした。

このシーンが文章だけなのに非常に鮮やかで。飛び散る血飛沫、白い雪、横殴りの霙、あんまり頭で物語を映像化しないのですが、この文章は一気に映像化されました。すごく綺麗。

作者が違うけれども、森村誠一の「小説の書き方 小説道場・実践編 」において書かれていた

忠臣蔵』では血腥い惨劇に純白の雪化粧をほどこして、武士道の精華としてロマンティックに仕上げた。

を思い出しました。まさにそのとおりだなと。
血飛沫が舞っているというのにどこかすごく美しい描写だなと。

読みやすく、美しい忠臣蔵物語

この本は連作短編となっているのですが、一番最後の話も美しかった。
美しい描写の多い本でした。

この本の中では名前がちらっと出てきただけですが、三郎兵衛の話もちょろっとあったので、それを考えると「その日の吉良上野介」→「最後の忠臣蔵」の順番で正解かも。

気になるのでちょいと調べてみたら、映画版とNHKテレビドラマ版があるんですね。

最後の忠臣蔵 [DVD]

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真田十勇士で幸村を演じていた上川隆也さんが寺坂を演じているそうなので、まずはNHK版を見ようと思います。映画版のほうはどうも主人公が瀬左衛門になっているようで、ちょっと変更でもしてあるのかな? と思うので、まずは正統派を見ようと思います。

上川さんの真田十勇士本当に格好良かったなー。幸村様威風堂々すぎた。

 

morelovelike.hateblo.jp

 

忠臣蔵関連は結構巡ったので、歴史小説の次は明治初期あたり行きたいなー。山田風太郎の警視庁草子読むかなと思ってたんですが、白泉社が面白い本を出していました。

半七捕物帳 リミックス! (招き猫文庫)

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www.hakusensha.co.jp

 どういうこっちゃ。これ超読みたい。

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