日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

MOJO 観劇

公演期間2017年6月23日(金)〜7月14日(金)
品川プリンスホテル クラブeX
 
原作:ジェズ・バターワース
演出・上演台本:青木 豪
翻訳:髙田曜子
出演
TAKAHIRO
波岡一喜
木村 了
尾上寛之
味方良介
横田龍儀
主催:ネルケプランニング

 7/1ソワレ、7/2ソワレ観劇してきました。
 正直に書いてしまうと7/1のほうはあまり面白いとは思えなかったというかぶっちゃけ殺意の衝動と同じ気分(察してくれ)で見てたんですが、7/2のほうで見立てに気付いてからは面白かった。
 ちなみに7/1も7/2も当日引換券にて。チケ戦争は大敗を機しました。

見てきた人

  • ハイアンドローからEXILEに興味を持ったものの基本的に「持った」レベルでどれが誰なのか死ぬほど怪しい (なので主演の人もハイロー出てるのとは違う髪型だとほぼ間違いなくわからないな!と思いながら見てきた)

感想

 出て来るキャラクターはどれも癖の強い人間ばかり。そしてそのどれもが皆信頼できない語り手。

 ベイビーは情緒不安定で機嫌がクルクルと代わり平気で嘘も話すので、彼の話すことがすべて真実とは限らない。
 シドは嘘つき。スウィーツにバラされていたこと以外にいくつ嘘をついているのか、観客のほうでは把握はしきれない。
 スウィーツはヤク中。薬をやって疲れているとおかしなものを見るかもしれない。作中でもそう言われている(しかしその言葉だって事実とは限らない)。
 スキニーは根本的に情報が足りない。誰よりも手持ちの情報が少なく、なおかつベイビー絡みでは嘘を言いかねない。
 ミッキーは最も信じられない人。
 だから観客として信じられるのは舞台上で起きたことのみ、故にそれ以外のことは信じないまま推理する必要がある。推理する必要があるかは置いといて。

 また、作中では多数の見立て、比喩が存在する。
 わかりやすい部分だと靴、鍵。これ以外にも比喩表現、前半で使った言葉を後半で別の意味合いを持たせる、前半で出されたものを別の意味合いを持って思い出させるなどということも多数存在する

 つまりは、この舞台は新本格ミステリーだ。

 冗談です。でも新本格ミステリーに詳しくて舞台を見慣れている人に見てもらってああだこうだと話してほしい。DVD化した際には数人で集まって流しながらメモ帳片手にこれは嘘だこれは信用できない、この情報は根拠がないと話し合って見てほしい。信頼できない語り手という言葉に強く惹かれる人ならば、絶対に楽しく見ることができる舞台だった。
 それに気づかなかったからこそ1回目に見たときは漠然と見てしまったわたしは面白さがわからず、2回めに見た時にとてもおもしろく感じられた。
 だからこそ、そのあたりを考えるのが得意な人が見て、どの言葉は真実か、どの言葉はどの意味か、そしてどれは何を意味しているのかというのを読み取ってほしい。解析する、想像する、読み解く、そういったものが好きな人にはたまらない舞台だと思う。

 つーか、これを主演の方の初舞台/初主演に持ってくるのが意欲的というか暴挙というかなんというか……。
 物語的に、わかりやすい落ちがあるわけでもなければ明確な見せ場が存在するわけでもなく、キャッチーさがあるわけでもない。格好いい主人公が快刀乱麻を断つ勢いで敵を倒す話でもない。その前に、主人公であるかもしれないベイビーが明確に敵として誰を判断しているのかも定かではない。紹介する際にこういう舞台です! という言葉も難しい。わたしは新本格ミステリーです! っていうけどこの言葉だってどの層に響くのか考えるとちょっとな……と思う。
 更に、前述で「本ミスクラスタで酒のみながらぐだぐだ読み解こうぜ!」なんて言ったものの円盤化は海外版権なので難しい、円盤化難しい作品でも比較的やってくれるWOWOWさんに頼もうにも男性器女性器の名称をもろに言う、気狂いなどの放送禁止用語の連発で難しい。
 よくこれを最初に持ってきたな、どんだけチャレンジャーなんだと思う。
 まあ初舞台は別のになった可能性はあるけどね……という話はまあ若手俳優界隈に足突っ込んでるとちらほら聞こえてきたしきつめの揶揄ツイートも回ってきた。そのあたりは当事者たるテニミュの人たち以外語ってはいけないと思うので口を噤む。

 ちなみにわたしは新本格ミステリー作家と言われる作家結構合わない作家多いです。十角館の殺人はここでも感想書いたけどこれありか!? ってキレたし。麻耶雄嵩どれ読んでも本自体ぶん投げかけるし。島田荘司法月綸太郎も苦手だし。あ、でも倉知淳北森鴻は好き。

 閑話休題
 この舞台、客席という読み取り手に対して情報を与えるためか円形劇場である品川プリンスexで行われている。舞台は300度ぐらいは客席。AブロックからわけられFブロックぐらいまでかな? センターはCブロック。Gは恐らく当日引換券で取れるベンチシート。
 円形劇場は「ほぼ全方向から観客に見られる」形状の舞台なのでどうなのかなと思っていたけれど、すごく良かった。
 尾上寛之さん、木村了さんが出番・台詞ともにとても多いのだけれども、どの方向から見ても完璧に魅せてくる。更にはそこに味方良介さん合わせた3人が、台詞の発生からして全部すごい旨い。例えばこれがテレビだったら自分には絶対にカメラは向いていないだろうというときですら細かな演技をし続けていて、見ていて面白かった。また発声が、浪岡さんとTAKAHIROさんとは違うのかな? 全指向性で、背中を向けられていてもとにかく声がよく聞こえた。木村さんと尾上さんの演技と台詞、狂言回し部分が多いのだけれどホントやばいぐらい聞き取りやすいし芝刈り機で笑ってしまうし楽しいしで最高。
 TAKAHIROさん、浪岡さんの声は背中が向いている位置だと少し聞こえづらかった。多分これは実際聞いてみるとわかるのだけれども声の響かせ方が違っていたっぽい。しかしこちらの二人も背中でも演技が続いていて、なんとなく表情すらも見える感じで凄く良かった。
 TAKAHIROさん、時折歌うシーンがあるのだけれど、台詞は単一指向性でも歌うときは全指向性だった。ここはさすが普段は歌っている人というべきか。
 一箇所わたしがあまり得意ではない種類のシーン部分で顔を背けていた先にTAKAHIROさんがいたのだけれど、恐らくテレビだったならば絶対に映されていないだろうシーンでも淡々と煙草をふかしつづけていて、そこにちゃんとベイビーとして存在していた。テレビ仕事の多い俳優さんだとカメラ向いてないだろう時には演技が途切れてしまうというの、ロスト・イン・ヨンカーズで思い知ったので、なんかすげーなとそこんとこで思ってしまった。
 個人的には浪岡さんの演技がすごく好き。表情でしっかり語ってくれるというか、一幕の少し上からなところや殴った直後の沈痛な表情、痛みをこらえるような表情なんかさすがベテランだなと。表情でクラブのことを大事に思っている、メンバーたちのことをかなり大事にしているようなのを示してきてたので本当にすごく好き。
 この細かい表情があったから、スキニーとのラストシーンを見ていた時に、もしかしてこの人は他の誰かがスキニーと同じ状態になっても同じようにしてくれるのではないか? と思ってしまってスキニーとの関係性が更によくわからなくなった。  横田さんについても何か書こうと思ったのだけれど、パンイチで柱に縛られ乳首をギターピックで弾かれてたイメージがあまりに強すぎて駄目です。誠に申し訳ありません。出番があまりにも少ないんだよ……。

 物語としての演出で、途中で「夕方だ、寒くなる」という言葉がある。それに合わせて客席の温度を思い切り下げているの、このあまり広くない劇場だからこそやれるものだなと思った。物語がこちらに対して侵食してきている。
 また、ラストシーンの光のなかに歩いて行く部分。入り口からでかいライトを使ってステージまで光を届かせるの、円形という入り口からステージまでの距離があまりない劇場だからこそできることだと思えた。

 チケットの入手は難しいかもしれない。当日券もネットで毎日10時から、1分~2分の先着争奪戦になっている。それでも新本格が好きな人、こねくり回すのが好きな人にはぜひ見てほしいと思った。

 

 これは完璧に余談だけれども、わたしは2回この舞台を見て、2回とも当日引換券で入った。
 1回目はベンチシート(G列)。椅子がふわふわで左右に余裕があってテーブル付きという、これがベンチならアイアの椅子はなんだ!? なあアイアってなんだ!? と思える席。
 2回目はA列最前。チケット貰った時に思わず変な声をあげてしまった……。連続で入ったフォロワーさんも最前だったので数枚連続で紛れ込ませているのかもしれない。二人して変な声をあげて嘘でしょ……って言ってた。並んだ位置は、入場開始時は2回めの時のほうが後ろにいたので、本当に適当に紛れ込ませているのかもしれない。もうとにかく驚いた。
 物販は開始5分でアロマミスト→パスケース→キーの順番で消えてった感じ。はええ。数を見誤っているのでは。

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屈折する星屑 (ハヤカワ文庫JA)江波 光則

太陽系のどこかに浮かぶ廃棄予定の円柱型コロニーには、いまだ一定数の住人が暮らしていた。ヘイウッドとキャットもここで生まれ育ち、唯一の愉しみ――ホバーバイクで人工太陽に衝突寸前まで接近する度胸試し――を繰り返している。将来の展望も生産性もないまま、流されて生きる鬱屈した毎日。だが火星から戦争を嫌って亡命してきた元軍人ジャクリーンとの出会いから、ヘイウッドはどう生きていくのかを模索し始める。

頭のぶっ壊れた連中のチキンレースの物語、かと思ったら親殺しの話、かと思ったらマネーロンダリングしつつチキンレースの物語。

江波光則の書く物語は相変わらず中盤から終盤にかけての勢いが凄く好き。今回も序盤から中盤にかけてのチキンレース部分はさほど興味を惹かれなかったけれど、終盤の柱が突っ込んできたあたりからはわくわくしながら読めた。
種明かしとしても途中でちょこちょこともしかして? と思う部分が含ませられていたからこそのマネーロンダリングとしての落ちは最高。

最初はジャクリーンを倒す擬似的親殺しの話なのか? と思いながら読んでいた。パニッシュメントというよりもくげよしゆきのセルロイドヘヴンのようなあのタイプかと。てっきり最終的にジャクリーンを倒そうとするけれどもうまくいかなかった、で終わるのかなと思っていたらそんなことはなく、というかそんな話ではなくもっと壮大な規模の物語をぶっこんできた。
壮大な規模の、星全体が揺らぐレベルの物語だと言うのに、最終的にはチキンレース。どっちが先にハンドルを切るか。精神病棟から抜け出せる一歩手前で再度自分を精神病棟に投げ込むお話だった。

最後のジャクリーンとの戦いの前で、主人公がキャットの刺青を自分の腕に刻むのがすごく好き。キャットと主人公の関係性はただの恋愛と一言で表しきれるものではなく相棒みたいなものでもあったというのを序盤の二人乗りのシーンなどで表されていたのもあって、あの部分でぞくっと来てしまった。
これでだったらいくら強いジャクリーンだって倒せるだろうと思ってからのあれこれそれだけれども。もはや相手人間じゃないじゃねーか。

面白かったは面白かったんだけど、なんとなくガガガの頃みたいな突き抜けたものはなくなっているのが残念というかなんというか。もっとぶっちぎって頭おかしいぐらいの勢いでのがまた読みたいと思う。