デザイナーとしてのプライド「VRMMOをカネの力で無双する2 (HJ文庫)」鰤/牙

あらすじ

イチローのギルド【Iris Brand】に錬金術師アイリスが復帰した。
イチローの周りに美少女が増え、気が気じゃないフェリシアに彼女との関係を尋ねられたイチローは、ゲームを始めてからの一週間を語り始める。
その内容とは、彼がトッププレイヤーに躍り出るまでの軌跡と、アイリスとの出会いに関連して引き起こされた事件(と課金)の数々で――。

デザイナーとしてのプライド

今回もまた、カネの力で無双する2巻。
というか1巻読んだのいつだっけ……。KindleUnlimitedで本探しして眺めている最中にタイトルを見て「あっあの1巻ラストで対戦相手のPCスペックではラグが発生するぐらいにフィールド内に課金アイテムばら撒いて、自分の高速回線ハイスペPCで勝利したやつだ!」と思い出せるぐらいには印象が深い本。なんつー印象だ。

 

ということで、めちゃめちゃ金のある御曹司が、カネの力で無双する第二巻。
今回は御曹司一朗がやばいことを自ら引き起こすというよりも、一朗が動いたために他者が揺さぶられ事件に繋がる巻。

とはいえ、今回はそこまでカネで無双しているわけじゃないかも。
アイリスに武具を作らせる際に消費される課金アイテムをいくらでも使えと出しまくったぐらいで、前巻のようなむちゃくちゃな使用法じゃない。それでも確実にすげー金額は行ってるけどまあ、あれと比べたら……。

お金持ちなので自分の身につけるものにも全力を出すという一朗、金持ちとしてのよくわからんプライドが覗いていて好き。
この一朗の理論というかプライドというか美学というか、そのあたりの明確になりそうでならないあたりがすごく好き。

武器や防具はどうせならデザイン的に好きなものを見に付けたい、そのためには既成グラではなくオリジナルグラフィックが良い。だったらオリジナルグラフィックを自主的に作っているような、そんな心意気の人に頼みたい。偶然見つけた露天のアクセがそういった意味で目についたのと、顔をちゃんといじっている子だから気に入った。
ちゃんと並べ立ててみるとギリギリ理解が出来るラインなんだけど、他者から見たら全然理解出来ないよね、という具合なのがすごく良い。

 

そして今回、この一朗の美学につきあわされた二人がなんともかんとも、可愛いと言うかなんというか。
利便性ではなく(そっちは能力が無いのでまだ強化出来ていない)デザイン性を好きにしたいデザイナー志望の少女アイリスと、実利を重視するエドワード。
アイリスは自分の実力をわかっているからこそ現状にもんにょりしてしまうし、でもデザインを文句つけられるのはプライド的にムカつく。けれどエドワードの作る武具のがゲーム的に良いことはわかっているし実力も高い……というなんとも言えない状況で、本当に居心地悪かったろうなあと思う。

私はエドワードのプライドも好きだけど、若干ちょっと無茶苦茶じゃないか?とも思う。
そういう職種プレイやってりゃいくらか似たようなこと過去にもあったんじゃないのかな。親方が認めた相手なのに他人を選んだというの、そんなの客なんてかなり移り気なんだから一度や二度じゃないだろうに。そのたびに毎回こんなキレてんのか?
まあ、その客が自分とこのギルドの斜向いにギルドの本拠地を建てるなんて無茶苦茶はそこまでないだろうが……。

 

ところでこれは私の感覚の問題なんだけど、過去編ってちょっとだるい。
現在時間を見れば誰が生きていて現在どういう関係になっているかわかる。この本はエドワードとアイリスが現在そこまで悪い関係ではなく、エドワードは一朗に負けてしまったのがわかる。それってやっぱりちょっと面白くない。
これは歴史小説を読んでいるときにもよく思ってて、歴史上の人物は何があっても死なないだろうなとか事件の犯人ではないだろうなとか予想がついてしまった(たまに意表を突くものもあるけれど)。それってちょっとおもしろさが半減してしまう。

1巻ですでに衣装が出ている以上難しいけれど、過去編っていう形はあんまりとってほしくなかったな、というのが感想。

きつい性格の主人公が社内のお悩みごと解決「お悩み相談室の社内事件簿 ~会社のトラブルすべて解決いたします~ (マイナビ出版ファン文庫)」浅海ユウ

あらすじ

大企業の営業課長としてバリバリ働いていた松坂紫音だったが、部下の裏切りにより転落して社内で最も窓際と言われる「お悩み相談室」に追いやられる。個性的なメンバーとともに社員の悩みを解決していくうちに自分自身も再生し、成長していく―。痛快お仕事コメディ!

きつい性格の主人公が社内のお悩みごと解決

きつい性格で人の心があるのか若干怪しい部分もある主人公が、部下の裏切りと言えば聞こえが良いが自分のパワハラが原因の部分もあり左遷され、お悩み相談室という人の心がない人間がこなすには少々どころじゃなく合わない仕事をすることになる話。

こう、ある意味一種テンプレ化した「個性的なメンバーと共にお悩み解決の仕事をするうちに主人公も角が取れて次第に自分が悪かったことを反省できるようになる」というアレ。
しかしこれが一歩違うのは、主人公があまりに気が強すぎる、とても気が強すぎる、やばいタイプの気の強さを帰国子女だからで誤魔化しているところ。身近に帰国子女いないけどここまでやべーのが量産されてたらこええなと思う。とりあえず人の心はない。

仕事で部下の出してきた書類に悪いところがあれば「0点」などと書き加えてこんなもの使えないと言い放ち別の部署へと追いやるタイプ。
そういうことが積み重なって左遷されたものの、用事があってその部署にちょっと居座ることになった途端に、新しい課長が「すごく良いけどここだけ直そうか」と丁寧に教えている横から口を出して自己流の上記のやり方を押し付けようとする。
いやマジでこんな上司いたら踏み潰されても元気になるタイプの部下以外は育たないからやめたほうが良いよ……。いや合う場所もあるかもしれないんだけど、少なくとも今は自分の管轄下を離れた相手に対してもまだ自分が課長であるかのように振る舞うのは頭がやばいんじゃないのかな……。

とにかく主人公のそういった不作法さというか自己中心的な部分が鼻について読んでいて不快感がすごかった。
あらすじにある「部下の裏切り」も主人公のパワハラが下人の一部になっているし、成長といっても人の心は手に入れていないし、うーん……という部分が多すぎた。

童貞を手玉にとってダンジョン探索「悪魔に騙されてTS転生したけどめげずにハーレム目指します (1) (Variant Novels)」百均

あらすじ

悪魔のお姉さんに異世界転生させてもらったけど、見事に騙されて美少女にTSしまった僕。
スキルは弱くて無双なんかできないし、ハーレムを作りたくたって自分が女の子じゃどうにもならない…!

めげずに美少女奴隷のユーウェと濃厚レズを楽しみ、童貞だけど凄腕なクロウをエロご褒美で釣ってダンジョン攻略で生計のメドを立てたんだけれど、迷宮マフィアの冒険者たちから目をつけられて、このままだと僕、肉便器にされちゃう…!

女の悦びに目覚めながら冒険生活、ちょっとだけ純愛!
TS転生で世界一童貞心がわかるヒロインになってしまった僕の、エッチな異世界ファンタジー!

 童貞を手玉に取ってダンジョン探索

これ完全にあらすじに偽りなし。最高。特に『TS転生で世界一童貞心がわかるヒロインになってしまった僕の、エッチな異世界ファンタジー! 』部分が。最高。

 

何が最高って、主人公は元童貞故に童貞の心がわかる。そのため、自分に優しくしてくれる超強い剣士であるクロウ(童貞)が何をされたら喜ぶかきっちりわかってる。これがもう最高。

敵をばっちり倒したら胸をもんでもいい、でも最初にそんなのやりすぎたらご褒美の価値が下がっちゃうから次からは手を握るぐらい。塩梅のやり方がめちゃくちゃに旨い。 更にはクロウが「こいつは俺の女!」と調子乗りだすとうまいこと釘を刺す。
理由としては、過去に自分が似たような勘違して黒歴史を作ったから。うーん……その過去何があったか気になるけどあんまり気にしないほうが良いやつだな……うーん……。

この童貞操縦加減がうまくて読んでいてひたすら楽しかった。世界一童貞心がわかるからこその操縦手腕。
ただ操って手玉に取っているだけならば悪女だけれど、主人公が元男で童貞だった、自分とどこか重ねていて、自分がしてほしかったことをクロウにしているという大義名分じみたものがあるからこそ嫌悪感や不快感が薄れている。
TS娘だからこそだよね、こういうの。

 

童貞と散々言ったけれども、相棒のクロウはめっちゃ強い。超すごい。ゴブリンぐらいならボッコボコにしてやんよ!で超強くて格好いい。なのに女の子の胸超見ちゃうし視線がつい行っちゃうし、という加減がすごく良いなー! 読んでて好きになれる。
戦闘力チートなので戦闘時も安心して見ていられるし、ピンチになっても修行で勝利!なタイプなので清々しさがあった。

ところでチートといえば、主人公の与えられたスキルがほぼ死にスキル、もしくは主人公を窮地に陥らせるためのものすぎて笑った。もうちょっと主人公に優しい能力をあげてください悪魔さん。

 

面白かったので続きが超楽しみ。

アンバランスな執着攻めに落とされる「ひとでなしアルファに、白い花を (雑談屋)」野原 耳子

あらすじ

ストーカー系不良少年α(17歳)×平凡なサラリーマンβ→Ω(32歳)

ベータとして平凡な人生を生きてきた沢木誠一(せいいち)。
お得意先である九条家に、上司の付き添いとして訪問した沢木は、突然、九条家の次男である少年に犯され、Ωへと変異させられる。

九条瑞樹(みずき)と名乗った少年は、沢木の平穏だった生活を土足で踏み荒らし、あんたは俺の番だと言ってくる。
沢木は少年に怯え、拒絶するが、次第に少年の不器用で一途な献身に気付き、複雑な感情を抱き始める。

望まずβからΩへと変異させられた男と、暴君から尽くし系男子へと変わっていく少年のお話。

アンバランスな執着責に落とされる

処刑少女で女女の巨大感情をたくさん食らったので男男の巨大感情を得たく、じゃあBLかなーということで。

BLはそこそこ読むけどオメガバースはほぼ全く読んだことがないので興味深かった。性別が変わる系なのかなと思ったらこれは特殊設定?みたいで。普通のベータはオメガに変化しないんだね。

 

瑞樹が子供ならではの我儘さと素直さと傲慢さを併せ持って受け好き好きしてるのがたまらなく可愛いかった。
無理矢理はしたけれど、その後家の前でちょこんと待ち続けてみたり、8時には親御さんが心配するだろうから家に帰ることと約束した上で誠一の家にあげてもらったりするあたりがたまらなく可愛い。

そういう子供ムーブされたらそりゃあ強く出られないだろうなあ……というギリギリのライン。そんな瑞樹に次第にほだされていく誠一、もうちょっと頑張れー!とも思うんだけれど、実際読んでいるとこれは絆されてしまうなあというわんこっぽさが瑞樹にはあるので負けちゃってもしょうがない。特に『良い人』の誠一には。

職場まで来た瑞樹をご飯食べにつれていく場所が普段来ないファーストフード店なあたり、この頃には完全に瑞樹を子供扱いしちゃってるのがたまらなく可愛い。

とはいえ、瑞樹のやったことは犯罪。中盤や終盤に見せる、誠一の前では隠していた凶暴さを見せるあたりがもー犯罪手前どころか完全に踏み込んでますねって感じだった。
こういった子供ならではの幼さと凶暴さのアンバランスさがすごく絶妙で良かった。

個人的に好きだなーと思ったのが瑞樹が兄に見せる感情で、家を継ぐのは兄のほうが良いだとかいうのもちゃんと全部理由があって筋が通っている。そういったあたり、兄をちゃんと見ていて好意を持っているのだろうなと感じられてすごく好き。
物語的には瑞樹兄は二人のあいだに立ちふさがる障害物キャラになっていたのだけれど、普段の瑞樹とのやり取りはきっとそんなに悪いものじゃないんじゃないだろうか。

 

サブキャラも魅力的。主人公上司ツンデレかわいいね……。良い上司だ……。 良いというか可愛いというか、ひたすらツンデレだった……。ツンデレに弱いのですぐ好き~~~~~~!となってしまう。

煽って叩いて炎上狙いの売名目的Youtuber vs 異世界ドスケベエルフ&ドラゴン&淫魔「【配信中】女神チャンネル! え、これ売名ですの! ? (GA文庫)」徳山銀次郎

あらすじ

『【動画】東京タワーがやばいw』
高校生、朱人(あかひと)は「ドラゴン襲来」の話題に乗り遅れていた。そんな彼の田舎にもドラゴンが襲来。
人気動画配信のチャンスと近づく朱人だったが、美しいエルフに襲われてしまう。異世界の奴らは侵略者だった!
そんな朱人の危機を助けたのは、異世界の女神!?
女神クラマによれば、異世界転生が女神たちの間で流行り、それを、うっかり話したことで、エルフが攻めてきたのだという。   女神クラマは手を差し伸べる。「一緒に、この世界を救いましょう! 」
朱人は叫ぶ。「だいたい、お前らのせいじゃねーかよっ! ! ! ! ! 」
GA文庫大賞《奨励賞》受賞作、ハイテンション・コメディ開幕!

煽って叩いて炎上狙いの売名目的Youtuber vs 異世界ドスケベエルフ&ドラゴン&淫魔

面白かったー!!!!

Kindle Unlimitedに入ってたのを良いことに今回のGA文庫受賞作4作を読んだんだが、これが一番ツボった。
ギャグとコメディとハイテンションに弱いんだよね……。本当にストレスなくするする読めた。

ちなみに女神チャンネルってあるけどエロくはなかった。どすけべエルフはいるけどエロくなかった。

 

本当にひたすらギャグとコメディとハイテンション。一拍も気を抜く暇なくひたすら畳み掛けるようなギャグ。
性欲が強くてエルフ相手じゃ物足りないからと侵略しに来たドスケベエルフという存在からしてすでに強い。男はさらった、じゃあ女は?というところで「さらった。ガールズトークがしたいからな!」という流れ最高でしょ。強い。

しかもかなり読んだ! 面白かった! きっと終わっ……まだ終わってない!? まだ続きがある!? どんだけ盛りだくさんなの!? まだ7章!? とテンション上がった。面白い本は終わらないほうが良い。

 

主人公は炎上系YouTuber。ドのつく引きこもりで家から出たくないし一人暮らしの生活資金を稼ぐため、また趣味のために炎上配信で稼ぐ日々。
少しでも再生数が増えたほうが広告費も入るので売名もたたきも炎上も必死。
そんな彼のご近所である日ドラゴンが現れた。リスナーたちに煽られて配信するため外に出る主人公。
そしたらドスケベエルフに襲われるわドラゴンは怖いわ、突然現れた女神に救援を求められるわで大騒ぎ。

何が面白いって、主人公はひたすら生配信を続けてる。
ドラゴンに襲われてバトルするときも、やべえドスケベエルフとおしゃべりしている最中も、彼に取り付いたやべえ呪いを解除するときもだいたいずっと生配信。
そして作中では女神様のすごいパワーで360度ぐるっと全部配信されて、コメントは全部空に表示される。

リスナーたちからしたら、主人公がドタバタしてるのなんて画面の向こうの物語。もともと炎上系YouTuberなため、コメントはいちいち全部辛辣だ。
主人公がどんだけやばい場面に陥っても、敵の少女が可愛けりゃ『○○ちゃんかわいー』『俺の嫁』『←俺の嫁』など主人公そっちのけで大騒ぎして、主人公がやばくても炎上系なので現れるコメントは『朱人しね』『朱人しね』とそればかり。
リスナーの空気がわかっているからこそそれを当然のように受け止め笑う程度の主人公。

この主人公とリスナーの関係が良い。なんか、微妙な妙なリアルさがあってすごく好き。
YouTuberって生身の人間ではあるんだけどどこか芸能人のような存在で、しかも炎上系で罵倒コメ慣れした人なんてしねしね言われまくってるだろう。YouTuberである主人公側もそれが本気の罵倒ではなくじゃれ合いと気安い仲での暴言とわかっている。
この関係性がすごく好きだなーと思った。

 

ところでこの作品、女キャラが多い。
多いわりにろくなのがいない。

ドスケベエルフ、やべえ淫魔、ヤンデレの呪い、超能力系YouTuber、他にもやべえのが盛りだくさん。
こう……ここまでラストに様々なキャラから好感度MAXでも「いやご遠慮します」と言いたくなるラインナップってそうそうないよね。ラストシーンで更に求婚者が増えたものの誰も嬉しくない状況過ぎて笑ってしまった。

一番ツボったのは超能力YouTuberのナイト。
可愛いし強いし格好いいし最高。終盤戦の、実は今までハンディがあったため全力を出せていなかっただけという流れからの圧倒的戦闘力格好良すぎでしょ……! こんなの好きにならずにはいられない。

あと、出番は少なかったけどツンデレ大好きなのでアイドルちゃん好みだ。

 

はーめちゃくちゃ面白かった……。勢い強くて本当に楽しかった。
あとがきでもともとはシリアス予定だったと書いてあってまじですか。それがこうなるの。天才かよ。最高。

続編があったら面白い系ではなくこれ単体1冊の圧が強い系だから本当に満足した。最高だった。