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日々放置プレイ

読んだ本と見た舞台の感想

スレイブメン

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冴えない男が悲劇のダークヒーロー「スレイブメン」となって1人の少女の人生を変えるために戦う姿を描く、「片腕マシンガール」の井口昇監督作品。バイトをしながら自主映画を作っているしまだやすゆきは、一目ぼれをした小暮彩乃に「自分の映画に出演してもらいたい」との思いが募り、勇気を出して声をかけようと彩乃に歩み寄る。しかし、その瞬間、レンズが装着されたマスクを覆り、人間とは思えない瞬間移動と腕力で通行人をナイフで刺す男が出現。しまだも男に刺されてしまうが、勢いではずれた男のマスクがしまだの顔に偶然装着。マスクに付いたレンズは、顔を5秒スキャンすると運命が変化することができ、マスクからエネルギーを注入されたしまだは、強力なパワーを手にする。主人公しまだ役に「仮面ライダー響鬼」「仮面ライダー電王」の中村優一。ヒロイン彩乃の奥田佳弥子のほか、阿部亮平津田寛治らが脇を固める。

監督
 井口昇
脚本
 井口昇
エグゼクティブプロデューサー
 菅野征太郎
 余田光隆
プロデューサー
 青木亨

キャスト
 中村優一:しまだやすゆき
 奥田佳弥子:小暮彩乃
 味岡ちえり:島田悦子
 松井望:柴田俊二
 杉原勇武:赤沼正平

 井口昇だった……。
 とネタにするにはあまりに井口昇作品を見たことはない(古代少女ドグちゃんとウルトラゾーンとデッド寿司ぐらい)わたしですら見ている最中に「これは井口昇だ……」と思うぐらいに井口昇な作品。  ハチャメチャなキャラクター、どこかおかしな主人公、笑っていいのか真面目にみたらいいのかわからないシーン、なんか、なんか感動なんだけど感動って素直に言うには何かが違うラスト。個人的に井口昇っぽいと思われるものがとにかくぶちこまれていた感じがあった。

 内容的には井口昇オール・ユー・ニード・イズ・キルというか。たった一人のヒロインのために、彼女のために戦う男、スレイブメン。彼女の苦しみを全て取り除くためにスレイブメンというマスクをかぶり、カメラを使って5秒スキャン、運命が変化した過去に戻ることになる。それを繰り返し、彼は運命を変え、彼女を泣かせる将来を変化させ、彼女を幸せに導こうとする。
 序盤は展開に無理があったり、なんでそーなるんだよwwwと笑ってしまうような状況だったり、とにかくありえねーとしかいいようのない状態で進んでいったりと酷い状況。だがそれらは、中盤にあるヒロインのモノローグで起きる種明かしで全てを一変させられる。

 序盤にあたる部分で姉を見殺しにするやすゆきくんにかなりイラっとしたのだけれど、でもこれ後半のネタバラシのあとで考え直すと、姉すらも放置して私のことを助けてくれる王子様のようなヒーローを彼女が欲していたということになるんですよね。
 彼女が欲していたのは誰よりも自分を優先してくれて誰よりも愛してくれるヒーロー。その権化であり妄想の具現化であるやすゆきは、そこで姉を捨ててセクハラおやじを殺すことを選ぶように作り上げられていた。
 どこまでも彼女が作り出した妄想上の都合の良い世界と考えると納得できる。
 やすゆきくんは身勝手なヒーローであるように見えるし女性を表面上しか見てないようにも見える、しかし彼は彩乃が作り出した存在だと考えれば、彩乃は表面上だけでも美しいと思ってほしいし、その上で内面を見てもドン引きせずに救ってあげると言われたかったんだな、と。そしてやすゆきくんの身勝手さは最近の少女漫画によくあるオラオラ系ヒーローとある意味近い部分もあるよなと考えたらまあ彩乃ちゃんによるキャラ造形がああなるのも納得。

 中盤~後半からは怒涛の展開とはいえ、彩乃さんは自殺しようとしてたんだ……からの流れも別にシリアスではないんだよな。自殺したい彩乃さんとしたくない彩乃さんの上下運動はふつうにめちゃくちゃ笑えた。シュールすぎだろあれ。ずるい。

 しかしまあ、なんだ、井口昇作品だなあ……とそれでもラストを見ても思えるあたりが強いと思った。色合いが強い。

 個人的にはアクションがすごかったので楽しかった。蹴りアクションがすごい多いし動きが早い。かなりの勢いで動きまくる。アクション良かったのでアクション好きな人に見て欲しい。

 

 仙台のチネ・ラヴィータでの上映のため、終了後にちょっとしたトークショーあり。内容にまつわる面白かったものとしては

  • ラストシーンの島田は島田ではなく別のキャラクターとして書いた
  • ラストシーンの島田の服装は中村優一さんの私服
  • 本当は彩乃は津田さんの娘という役柄にしようと思ったんだけど津田さんのスケジュールが合わなくてああなった
  • 津田さんは本来は息子殺しのシーン部分はスケジュールの都合が合わずに来られないはずだったが、前日に予定を開けてくれて来てくれた、なのであのシーンは喋るときに津田さんのほうは仮面をぱかぱか開ける。
  • 何箇所か中村優一さんがスレイブメンの仮面かぶってるシーンがある。具体的には上半身裸に仮面かぶってるところやラストシーン付近のあたりは中村さんがかぶって走った。

 あたりかな。終了後撮影タイムもありましたし剥がしなし時間たっぷりハイタッチもありました。楽しかった。

裏世界ピクニック ふたりの怪異探検ファイル (ハヤカワ文庫JA)宮澤 伊織

仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で“あれ”を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!

 ネットロア、異世界、百合。
 ネットロアに銃器で立ち向かう百合SFホラー小説。

 面白かったー。あんまりネットロアに詳しくないわたしでも知ってるようなものが多くてすごく面白かった。こういうのは、知らなくても楽しめる、元ネタを知っているともっと楽しめるっていうのが一番良いけどまさしくそれ。
 出てきたネタは、くねくねや八尺様、猿夢。きさらぎ駅など。洒落怖スレなんかを見て無くともなんとなくネットを漂っていると知ってるというネタが多いんじゃないかな(とくにきさらぎ駅なんか定期的にツイッターでも話題に上がるし)。

 偶然ネットロアの存在する世界に潜り込むようになっちゃった主人公空魚が、そちらの世界で出会った美少女鳥子とともに、鳥子の知り合いでこちらの世界で行方不明になった女性を探すのがお話のメイン。とはいえ、そちらがわの世界にはそれこそくねくねのようなアレな生き物が沢山いる。
 普通のそれこそネットロアなんかじゃああれらに対抗する手段はない。だがこの話では対抗手段が存在する。銃で撃つ。まじかよ。クロックタワーかよ。
 さすがにただドンパチ撃つだけじゃなくて相手の弱点を狙って撃つだとか、相手に有効打をあたえられるタイミングで撃つだとかあるけど、基本は撃つ。まじかよ。

 一緒にいるうちに空魚が鳥子に対して自分だけのものみたいな独占欲を持っていく過程が見ていてとてもにやにやした。相手には唯一がいるかもしれないと気付いてぎりぎりとし始めたり、自分だけを見てほしいと思ったり。八尺様に連れて行かれかけるときに見えたのが鳥子の時点でこの子もう……とは思っていたけれども、もうかなり鳥子にずぶずぶだった。
 次第に惹かれていくけれども相手には大事な人がいて自分はその立場には絶対立てないっていうの、すごく好きなので読んでいてとてもにやにやした。

 百合って言っちゃっていいのかなって最初ちょっと迷ったけれど、作者さんが

はい。これが俺の考える百合だ、読んでくれという気持ちです。

 って言ってるのでわたしも言う。これは最高に百合だ。

異世界、怪談、強い百合。『裏世界ピクニック』宮澤伊織インタビュウ | SF MAGAZINE RADAR | SFマガジン | cakes(ケイクス)